2008
煩悩の犬かたわらに仮寝して夢を見るいつか狼になる
恋着の午後地の果てに霧笛鳴るあなたが眠る海は深くて
簡単に押し潰される親指でそれほどまでに乾燥している
ささやきは焼き付いて消えることがないキヨスク裏の電話機になお
思考してしこうしてそう志向して君に恋していると認める
誰ひとり犬さえもいない白昼の夢その奥で眠る穴熊
041:存在存在が耐えられぬほどに軽ければ飛べるかも何もかもを忘れて042:鱗いまは無き熱の片鱗くちびるのおもてに残る薔薇に似ている043:宝くじ亡霊は佇み宝くじを買う人を見ている数寄屋橋にて044:鈴何度でも鳴らす呼び鈴きれぎれに祭囃子の遠ざかりゆ…
結節に触れ指先が立ちどまる君が妖精である確率
街灯は静かに凍り夜は更けて裂いた布しろく結ぶ婚礼
伝票を切ります設備機材費で断じて業務委託費じゃない
炎天に飛行機の音(ね)の轟きて面を上げて裂けよひまわり
ひとまわり大きな秘密そこからは見えるだろうか凧に眼を書く
土曜日の昼下がり。ピアノはきらい。自転車のかご。飛び跳ねて。楽譜。
亡霊は佇み宝くじを買う人を見ている数寄屋橋にて
何度でも鳴らす呼び鈴きれぎれに祭囃子の遠ざかりゆく
いまは無き熱の片鱗くちびるのおもてに残る薔薇に似ている
存在が耐えられぬほどに軽ければ飛べるかも何もかもを忘れて
031:忍懸垂はできそうもない試みに指をかければ忍び返しが032:ルージュ口紅はひかないすぐに落ちるから口ずさむ「ルージュ」途切れ途切れに033:すいか冷蔵庫すいかは徐々に膨らんですべてを飲み込み寿命を終える034:岡岡崎に家族は集い遠ざかり貴族がい…
花紅く小さき鉢の粘液が虫捕らえおり夏がまた来る
家出するならここに住む。田中荘。線路沿い青くあじさい。王子。
雅なるひと美しき波を見ゆ意志のみ有りて何の因果か
「まるで船に酔ったかのよう」内側に小さな重しを抱いて娘は
ロータリー陽炎に裂けゆらめいて2CVきらり夢かうつつか
薄もやに手招くようなそぶりして「ごらん私を」過去艶然と
岡崎に家族は集い遠ざかり貴族がいるとかいないとか言う
冷蔵庫すいかは徐々に膨らんですべてを飲み込み寿命を終える
口紅はひかないすぐに落ちるから口ずさむ「ルージュ*1」途切れ途切れに *1:http://www.miyuki-lab.jp/disco/lyric/ba040.shtml
懸垂はできそうもない試みに指をかければ忍び返しが
021:サッカーゆらゆらと母は日射しに溶けてゆくワンピース青きシアーサッカー022:低低空を飛んで見逃さないように君の棺が運ばれてゆく023:用紙常套句みだれつけいる隙も無くレポート用紙の白そして白024:岸まるで岸壁を歩いているようだ虚空右手が自由…
たちのぼる湯気を気配と理解する。「誰かいる」ただそれだけのこと。