041から050まで

041:存在
存在が耐えられぬほどに軽ければ飛べるかも何もかもを忘れて

042:鱗
いまは無き熱の片鱗くちびるのおもてに残る薔薇に似ている

043:宝くじ
亡霊は佇み宝くじを買う人を見ている数寄屋橋にて

044:鈴
何度でも鳴らす呼び鈴きれぎれに祭囃子の遠ざかりゆく

045:楽譜
土曜日の昼下がり。ピアノはきらい。自転車のかご。飛び跳ねて。楽譜。

046:設
伝票を切ります設備機材費で断じて業務委託費じゃない

047:ひまわり
炎天に飛行機の音(ね)の轟きて面を上げて裂けよひまわり

048:凧
ひとまわり大きな秘密そこからは見えるだろうか凧に眼を書く

049:礼
街灯は静かに凍り夜は更けて裂いた布しろく結ぶ婚礼

050:確率
結節に触れ指先が立ちどまる君が妖精である確率