031から040まで
031:忍
懸垂はできそうもない試みに指をかければ忍び返しが
032:ルージュ
口紅はひかないすぐに落ちるから口ずさむ「ルージュ」途切れ途切れに
033:すいか
冷蔵庫すいかは徐々に膨らんですべてを飲み込み寿命を終える
034:岡
岡崎に家族は集い遠ざかり貴族がいるとかいないとか言う
035:過去
薄もやに手招くようなそぶりして「ごらん私を」過去艶然と
036:船
「まるで船に酔ったかのよう」内側に小さな重しを抱いて娘は
037:V
ロータリー陽炎に裂けゆらめいて2CVきらり夢かうつつか
038:有
雅なるひと美しき波を見ゆ意志のみ有りて何の因果か
039:王子
家出するならここに住む。田中荘。線路沿い青くあじさい。王子。
040:粘
花紅く小さき鉢の粘液が虫捕らえおり夏がまた来る