いとけなく夢見がちなる左手に針刺すように深くつめ切る
いいねって言えば言うほど遠くなるそんな時代と言えばそれまで
そっと袖引けば驚く君といて体温のないものになれたら
永遠に交わらずとも点々とWebの波間に灯る明かりが
無花果を裂いては指を濡らしつつ彼を育てた庭をみている
咲きもせず散りもせずただ溶けるためそのためにだけ選ばれた花
明日はまだもう少しさき秒針の音夜明け前隣室の咳
音ひかり風瞬間を焼き付ける君の視線が届く時差、今。
「題詠blog2012」に参加します。昨年はお休みしましたが、またあたらしい気持ちで挑戦してみます。どうぞよろしくお願いいたします。
こんな静かな雪の日に心から会いたい人がひとりもいない
「もしも差し支えが無かったら」と彼は控えめに切り出した。「なんでしょうか」と私は答えた。 「腕を組んで歩きませんか」「腕を」「おかしいですか」「いえ、おかしくはない、と思いますけれど」「いや、やっぱりやめましょう。暑いですし」 「ええ、ぜひ…
裏切って損なってなお夢みてよゆきかう影をミモザ館を
とがってもとがってもなお大らかに外接円のようなこころで
二枚目のアルバムは「愛(夢)よりも/人恋しさに」グッバイガール
ひそやかに何を埋めたか裏庭に染まる指先露草の青
穏やかな人と呪いをかけられてこの上何を失えばいい
元気だと知りたくなくて知りたくて飛ばす生霊には顔が無い
001:春醜さを脱ぎ捨てるよに老いてゆく久遠の花のほころんで春002:暇あなたとの暇つぶしにも飽きてきて影ひとつずつ流す暗渠に003:公園きっとまだ待っているから会えないと教えてあげる日比谷公園004:疑「では何を信じているの」と疑問符を省いたそれは…
忘れないことを約束できなくてひとかけらずつ選ぶ目印
辛子和えパスタ天ぷら菜の花がおいしい苦いあなたがいない
愛らしき人かたわらに君はいて南北線よ走れ深みへ
遠恋か何かですかと問う人に手を振って乗る夜行列車に
理由などとうに忘れた君を待つネオンサインは雨に滲んで
最後には立ち去れとだけ決められて怖いと泣いて綺麗と泣いて
醜さを脱ぎ捨てるよに老いてゆく久遠の花のほころんで春
あなたとの暇つぶしにも飽きてきて影ひとつずつ流す暗渠に
きっとまだ待っているから会えないと教えてあげる日比谷公園
「では何を信じているの」と疑問符を省いたそれは糾弾ですか
彼が出て行って、一週間が過ぎた。私はいつも通りの生活を続けていた。少なくとも、表向きは。いくつか変わったことがあったとすれば、狭いベッドで好きなように手足を伸ばして眠れるようになったことと、食事のことを考える必要がなくなったこと、そして夜…
そのことを知ったとき、回復の段取りはほとんど完全なかたちで目の前にあった。私はとても疲れていて、不安だった。でも(かろうじて)まだ絶望してはいなかった。この数日のあいだに、ここ一年半ほどの月日をかけて自分が食い潰してきた幻想のようなものの…