061から070まで

061:@
その文字を猫の声と呼ぶ国がある越えてゆけ@電子の波を

062:浅
金曜日午後二時半にお茶会を「ウインズ浅草」夢のあとさき

063:スリッパ
顔だけを覗かせて二人かくれてる子ネズミみたいだねスリッパ

064:可憐
許されているものだけがそこにいて君がその身にまとう可憐さ

065:眩
春浅く君はるか夢は降りしきるまだ返せない『眩暈』カネッティ

066:ひとりごと
ぬぐってもぬぐってもなお凍り付くひとりごと白く霧氷にも似て

067:葱
冷蔵庫うら側に葱が落ちている呼吸しているひそやかに夜

068:踊
音楽が鳴る鳴っているこの草原を踊るように駆け抜けよ足首

069:呼吸
森の呼吸(いき)国道なんて名ばかりだヘッドライトを消していますぐ

070:籍
爪先はどこまでも冷え何ひとつ残さぬための鬼火分籍